2019.03.26一緒に。もっと、

犬が必要とする優先順位③(3回シリーズ)

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犬が必要とする優先順位③(3回シリーズ)

ケーナイン・ストレスケア・スペシャリストの清水です。今回は、シリーズ最後となる犬の欲求階層の頂点を含む3つをご紹介します。

これまでの記事はコチラ 
  →犬が必要とする優先順位①
  →犬が必要とする優先順位②

人間の責任

前回までの、①生命の安全、②飲食(摂食)、③健康管理・メインテナンス、④睡眠と休息は第一グループであり、生きていく上で特に重要であると説明させて頂きました。

今回の⑤から⑦も、もちろん犬にとって必要であることは間違いなく、優先順位が低いからといって、無視して良いものでも、考慮しなくても良い訳ではないのはお分かりだと思います。

全てが満たされて初めて「良い福祉状態」や「真の健康状態」になり、これが私たち人間が犬たちに保証しなくてはいけない条件だと思っています。

犬が必要とする優先順位③(3回シリーズ)

第五階層

さて⑤番目ですが、motion=運動です。ここには単に「運動」というよりも大きく、「身体を動かす」という意味合いが入っています。

動物が通常の健康を保つのに適度な運動が必要なのは簡単に把握できると思います。この為、多くの飼い主は毎日欠かさず一緒に散歩に行ったり、おもちゃやフリスビー、テニスボールなどで遊んだりしているのだと思います。

人間もヨーロッパ旅行などで半日も狭い飛行機の中で過ごすと、「エコノミー症候群」と言われる疾患に陥ったりもしますし、やはり疲れたり本調子でなかったりします。これには幾つかの理由がありますが、大きく関わってくるのは血液の循環が悪くなっての体の凝り、自由に動くことの出来ない環境でのストレスなどがあげられます。

簡単な言い方をしますと、本来の生活と違い、自由のきかない環境で心身共にストレスを受けているということです。実は犬も同じで、狭い移動用ボックスなどに長時間入れられるとストレスになり、福祉は低くなります。

これが顕著なのがケージ飼育での養鶏などで、実際にほとんど身動きすることも叶わない環境の場合もあります。ドイツにおいては、動物の飼育に関しての法律や条例が厳しく定められており、例えば体高50cm未満の犬のケージは、最低6平方メートルとされています。

第六階層

次に⑥番目です。Exploration=探査活動がここに入ります。これは自然界の犬科の動物の行動を観察すると明らかで、身の回りの環境確認や状況確認が含まれます。

もちろん動かなければ活動はできませんので⑤番目にも関わってきますが、一般の犬では散歩時の臭いの確認が代表的です。自分の行動範囲の中での調査をし、多くの情報を得ます。

そして、この情報は「自分がどんな位置にいるのか」や「周りではどんなことが起こっているか」など、環境の中で生きていくのに使われます。また周辺環境に自分を知らせる「マーキング」もこの階層に入り、外部との関わりという非常に重要な意味を持ちます。

ですので、犬が散歩時に一生懸命に臭いを嗅いでいるのは、私たちが新聞や週刊誌、テレビで情報を得るよりも重要で、出来る限り気の済むまでやらせてあげたいですね。

因みに、犬の尿には「健康状態、精神状態、性別、犬種、年齢」などの情報が含まれており、次の縄張りの主張にも大きく関わってきます。

第七階層

最後の⑦番目は、Territory=縄張り活動です。そして大きくはSocialization=社会活動も入ります。これは読んで字のごとく、自分の縄張りのパトロールや確保、そして生きていく上で重要なスペースや光、水や睡眠場所といった資源の確保が含まれます。

その上で他の犬と関わる社会活動をし、伴侶を確保し、自分のDNAを残すという最重要目的に繋がるのです。当たり前の話ですが、自然界では自分達の子犬が育ちにくい環境であり、例えば食糧が少なく餓死の可能性があれば繁殖は行いませんので、この⑦もとても重要だということが分かります。

そして、この自分の領土である良いテリトリーを確保することが、これより下の①から⑥を強化することになり、より一層安心できる環境になるのです。

犬が必要とする優先順位③(3回シリーズ)

最後に

3回に渡って1つの「欲求階層」という題で話をさせて頂きましたが、日々の生活で自分の犬には何が欠けているのかなど、少しでも考えるきっかけになればと思います。

またそれをスタートとし、犬が何を考えて行動しているか?など考えてみるのも良いと思います。これは私の持論ですが「全ての行動には理由があり、そうさせたきっかけがある」と思っています。

可愛く愛しいパートナーは、いつでもメッセージを発信しています。そして大きなつぶらな瞳で訴えかけています。その大切なメッセージを1つでも多くとらえることができれば、より強い信頼関係が築け、そして幸せな時間が増えると思います。

まずは、よく観察をしてみましょう!

そして、いつもの行動にはどんな理由が隠れているか、ほんのちょっとだけ考えてみましょう!

きっと大きな発見があると思います。

また、我々Natural Animal Centreの卒業生は、このピラミッドの頂点に問題行動(正式には対人間迷惑行動)や異常行動があると思っており、実際に①から⑦が十分に満たされることで、多くの問題はなくなります。

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清水 克久(しみず かつひさ)

英国Natural Animal Centre (http://naturalanimalcentre.com/)で、ケーナイン・ビヘイビアーとバッチフラワーレメディを学び、アニマルプラクティショナー(BFRAP)を取得。ストレスケアを中心に、行動学や生理学など科学の面からも解説するケーナイン・ストレスケア・スペシャリスト。元Dog Actuallyライター。ホリスティックケアカウンセラー。